『ぼくを燃やす炎』待望の続編
ダリオとオスカルのもうひとつの物語
原著の情報
書名: EL HIELO DE MIS VENAS(ぼくの血に流れる氷)
作:マイク・ライトウッド(Mike Lightwood)
発行国:スペイン
発行年:2017年
ジャンル:フィクション(ヤング・アダルト15歳以上)
ISBN:978-417002-04-6
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あんたはあたしにとって、一番大切な存在だよ

ゲイだから愛さなくなるなんて、そんなことあるはずないじゃないか

著:Mike Lightwood
セビーリャで生まれ、現在マドリードに住んでいるが、心はいつまでもホグワーツにあるだろう。文学への情熱に駆り立てられて文芸ブログを作り、その後You Tubeチャンネル(www.youtobe.com/MaikoVlogs)を立ち上げた。執筆活動と教育、翻訳の仕事を両立させており、翻訳書は現在までに約70冊を数える。
プラタフォルマ・ネオ社からは学校でのいじめと同性愛嫌悪を描いた2作の小説『ぼくを燃やす炎』とEl hielo de mis venas(ぼくの血に流れる氷)、そのスピンオフ作品でふたりの少年の関係を描いたLa estrella de mis noches(ぼくの夜の星)を出版。またBiónico(バイオニック)でSF、El fantasma de los huevos(卵の幽霊)でユーモア小説のジャンルにも進出した。

翻訳:村岡直子
スペイン語翻訳者、(有)イスパニカ翻訳講座講師、校正者。兵庫県出身、同志社大学文学部卒業。グラナダ大学セントロ・デ・レングアス・モデルナス留学。訳書にマイク・ライトウッド『ぼくを燃やす炎』(サウザンブックス社)、フェデリコ・アシャット『ラスト・ウェイ・アウト』(早川書房)、トニ・ヒル『ガラスの虎たち』(小学館)、ピラール・キンタナ『雌犬』(国書刊行会)、共訳書にペドロ・バーニョス『地政学の思考法』(講談社)などがある。

だれにも見せられない脆さを抱えてもがく
ゲイの少年のリアル

 2018年に当社から刊行された『ぼくを燃やす炎』は、親友に恋して拒絶されたばかりか、ゲイであることが周囲にばれて自傷行為を始めた少年、オスカルが主人公だった。本書の主人公はオスカルの元親友で、アウティングにより彼を地獄に突き落とした張本人、ダリオ。オスカルが試練を乗り越えて前へ進みだすまでと同じ時系列でダリオの日々を描く、いわばもうひとつの『ぼくを燃やす炎』だ。

 オスカルを苦しめたことで、ダリオも苦しんでいた。オスカルが体から血を流していた間、ダリオは心から血を流していた。彼もオスカルに恋をしていたからだ。だけどダリオは、自分がゲイだとは認めたくなかった。認めるわけにはいかなかった。たったひとりの家族である祖母にそのことを知られたら、家を追い出されるかもしれない。

 ひりひりする心を癒すため、ダリオはゲイ・クラブに通うようになった。だがそこで知り合った少年たちとも軋轢が生まれ、ダリオの苦悩はさらに深まる。どうして自分は人を傷つけてしまうのか? やがて彼は、自分を変えようと決意する――。

 LGBTQだけでなく、様々な性自認が存在することについての知識は近年、少しずつ広まってきたように見える。だがそれに対する理解は深まっているだろうか。社会の無理解と偏見に悩む当事者の数が、少しでも減ったといえるだろうか? 前作と同様、自身もセクシュアル・マイノリティである作者が、性自認の問題を抱える若者たちのリアルな声をもとに紡ぎ出したのが本書。自己を否定するあまり、自分ばかりか他者をも傷つけてしまう少年の痛みとあがき、そして希望と再生を描く物語だ。