状況を変えるのはぼく次第。
恐怖に支配されるままなんてだめだ。
人生の手綱は自分でとるべきなんだ。
ゲイというセクシュアリティをどうしても受け入れることができない、高校生のダリオ。親友オスカルとは「秘密の関係」を楽しんでいたが、ある事件がきっかけでその関係が崩れ出していく。早くに両親を亡くしてしまい、たった一人の家族は毎週教会に通う祖母だけ。ゲイバレして、親友も家族もなくしてしまうことを恐れていたダリオにもやがて転機が訪れる。
だれにも見せられない脆さを抱えてもがく
ゲイの少年のリアル
2018年に当社から刊行された『ぼくを燃やす炎』は、親友に恋して拒絶されたばかりか、ゲイであることが周囲にばれて自傷行為を始めた少年、オスカルが主人公だった。本書の主人公はオスカルの元親友で、アウティングにより彼を地獄に突き落とした張本人、ダリオ。オスカルが試練を乗り越えて前へ進みだすまでと同じ時系列でダリオの日々を描く、いわばもうひとつの『ぼくを燃やす炎』だ。
オスカルを苦しめたことで、ダリオも苦しんでいた。オスカルが体から血を流していた間、ダリオは心から血を流していた。彼もオスカルに恋をしていたからだ。だけどダリオは、自分がゲイだとは認めたくなかった。認めるわけにはいかなかった。たったひとりの家族である祖母にそのことを知られたら、家を追い出されるかもしれない。
ひりひりする心を癒すため、ダリオはゲイ・クラブに通うようになった。だがそこで知り合った少年たちとも軋轢が生まれ、ダリオの苦悩はさらに深まる。どうして自分は人を傷つけてしまうのか? やがて彼は、自分を変えようと決意する――。
LGBTQだけでなく、様々な性自認が存在することについての知識は近年、少しずつ広まってきたように見える。だがそれに対する理解は深まっているだろうか。社会の無理解と偏見に悩む当事者の数が、少しでも減ったといえるだろうか? 前作と同様、自身もセクシュアル・マイノリティである作者が、性自認の問題を抱える若者たちのリアルな声をもとに紡ぎ出したのが本書。自己を否定するあまり、自分ばかりか他者をも傷つけてしまう少年の痛みとあがき、そして希望と再生を描く物語だ。