本を売るだけが「書店」ではない
個性豊かな台湾の「独立書店」40店のドキュメンタリー
書名:書店本事 − 在地図上閃耀閲讀星空
著:郭怡青(クオ・イーチン)
発行:台湾
言語:中文/繁體
発行年:2014年
ジャンル:ノンフィクション
ISBN:978-95-732744-0-7

試し読みできます
TB_taiwan_browsing.pdf(261KB)
  • 2019年4月頃刊行予定
    プロジェクトの様子はこちらから
    販売開始のお知らせをご希望の方は下記よりメールアドレスをご登録ください。
  • はじめての方へ

黄色い看板には「全国最安値の書店」とある。財布のヒモが固い本好きたちにとっては、師大商圏の水準書局で新しい本が最低でも三割引で買えることは常識だ。

店を訪れたことのある人なら、店主の曾大福(ツォン・ダーフー)が本を「熱烈におススメ」するのが好きで、本の値段がどこまで安くなるかは彼の気分で決まり、そして会計時に本のカバーに店主の手により「水準書局」の印が押される、ということに気付くだろう。

じっくり観察してみると、この三つの特色の中に水準書局の物語が見えてくる。

(「雑談をこよなく愛する書店:水準書局」より)

『書店本事:在地図上閃耀閲讀星空』
インタビューアー/ライター:郭怡青(クオ・イーチン)
台湾の月刊誌「經典雜誌」を経て、現在フリーライター。共著「海峽:文明的交會與分野」は第36回金鼎奨(台湾政府出版賞)ノンフィクション部門にノミネート。

『書店裡的影像詩』
監督:侯季然(ホウ・チーラン)
1973年台湾・台北市生まれ。映画監督、脚本家、作家として活動。時と記憶について描いた作品を多く手掛けている。(東京国際映画祭・映画『四十年』(16)より引用)

作品の多くは日本の映画祭で上映されている。『台湾黒電影』(05)、「有一天」(10)、『ジュリエットの選択』(10)、『狼が羊に恋をするとき』(12)、『四十年』(16)。

文化の発信地、地域の交流の場として
個性豊かな「独立書店」の魅力に迫る

「台湾」は近年、人気の海外旅行先として広く一般によく知られるようになりました。書店に並ぶ台湾旅行ガイドブックはここ数年で飛躍的にその数を増やし、雑誌の旅行/海外特集などでも盛んに取り上げられるようになりました。また日本各地で台湾に関するイベントも急激に増えているように思います。

距離の近さから、旅行先として何度も台湾に足を運ぶ人たちの中には、その歩んできた歴史や親日/知日/懐日というキーワードを元に、求める情報も通り一遍のグルメや観光情報から「もっと深く台湾を理解する」ためのものに移行してきているのではないでしょうか。数年前にくらべ、台湾に関する書籍も増えてきています。

そんな中、台湾の書店についてはどうでしょうか。洗練された雰囲気、書籍と一緒に取り扱う雑貨類のデザイン性や品質の高さ、そして座り読みが許されるユニークさから、大型チェーン系書店の「誠品書店」が観光スポットとしてガイドブックや旅行特集等で紹介されているのを目にします。ですが、台湾の書店=誠品書店なのでしょうか?


実は台湾各地には、個人経営による書店や古書店が沢山存在します。個人経営のいわゆる本屋さんは、台湾では「独立書店」と呼ばれています。カフェを併設したり関連の雑貨を売ったり…というのは当たり前、店主たちは各自がこだわりを持ち、文化の発信源として、地域の交流の場として、「物を売る」だけではない、プラスアルファの部分に着目し、日々書店という一つのプラットフォームを通じて、そこに集う人々の生活を豊かにするべく奮闘しています。そんな彼らの姿に迫り、台湾の書店事情や、台湾で定着しつつある独立書店文化を知ることのできる作品が、今回ご紹介したいルポルタージュ本『書店本事:在地図上閃耀閲讀星空』(以下、「書店本事」)とドキュメンタリー映像集『書店裡的影像詩』(以下、「影像詩」)です。


「独立書店」の店主を活き活きと描きあげる
書籍『書店本事』と映像詩『書店裡的影像詩』を日本語で

台湾各地の個性的な書店約40店を紹介した2014年発行の「書店本事」と「影像詩」は、書店が舞台の連続テレビドラマ「巷弄裡的那家書店」(訳:路地裏の書店)がきっかけとなり製作されました。ドラマの脚本班がエピソードを集めるために訪れた台湾各地の独立書店で見聞きしたエピソードを通じ、さまざまな経営形態、個性的な店主とその理念、そして店が地域社会に果たす役割や存在意義などに着目。台湾に根付きつつある独立書店文化をテーマに据え、文章と映像という異なるアプローチでその実態に迫ったユニークなスピンオフ作品です。

書籍『書店本事』は、店主へのインタビューを元に、その店の成り立ちやコンセプト、店主の思いなどが活き活きと描かれたルポルタージュ集です。一つの書店につき6ページの紙幅を割き、各書店については「空間本事」(店の基本情報)、本文(取材記事)、「人物本事」(店主プロフィール)、「茶話本事」(店主へのQ&A)の4つのセクションで構成されています。本文(取材記事)は気軽に読むことのできる程よいボリュームで、書店を紹介するガイドブックとして、読み物として十分に楽しむことができます。

映像集『影像詩』は台湾の映画監督・侯季然(ホウ・チーラン)によるドキュメンタリー作品です。店主へのインタビューをメインに構成されたものから、店を定点観察したもの、さらにはイメージ映像のようなものまでさまざまな表現方法により作られたドキュメンタリーは、一つの書店につき3~4分前後の長さで、ちょうど日本のテレビ放送で番組と番組の間に流れるミニ番組に似ているかもしれません。台湾では前出のドラマ放映当時に、番組のミニコーナーとしてドラマ一話につき一つの書店が紹介されるかたちで、テレビで放映されました。また、映像集を一つの作品とし映画祭で上映されるなど、ドキュメンタリー映画としても評価されています。台湾では全編を収録したDVDが出版されているほか、誰でも自由にアクセスできる状態でYouTubeにも公開されています。




今回のプロジェクトは、この「書店本事」の日本語翻訳版を日本で出版し、本と合わせて「影像詩」の日本語字幕版を自由に視聴できるようにすることを目標に立ち上げました。本と映像集で行ったつもりの台湾書店めぐり、なんていかがでしょうか? どうぞご支援くださいますようお願い申し上げます!

プロジェクトの詳細は近日公開予定です。右上の「お知らせを受け取る」ボタンよりお名前とメールアドレスを登録していただくと、プロジェクト開始のお知らせメールをお送りしますので、ぜひご登録ください。

出版不況にめげない! 台湾の活力あふれる書店文化
台湾の新しい魅力を知って欲しい

発起人、小島あつ子より

思えば『書店本事』との出会いも、大好きな台湾映画がきっかけでした。『狼が羊に恋をするとき』(12)を監督した侯季然(ホウ・チーラン)の撮った台湾の本屋さんがテーマのドキュメンタリーが中国で高評価された、というネットのニュースを見たのが2015年の春のこと。ニュース記事にあったタイトル『書店裡的影像詩』からすぐに映像にたどりつけたのは、幸運にも、このドキュメンタリーがネット上に公式に全編公開されていて、誰でも自由に視聴ができたからです。

そこに映し出されていたのは「独立書店」と呼ばれる台湾各地の町の本屋さん。どれひとつとして同じものはなく、経営者のこだわりが反映されていてひたすら面白い! 個性あふれる台湾の本屋さんの映像からは、台湾の街そのものの息吹が聞こえてくるようでした。その後しばらくして、書籍版『書店本事:在地圖上閃耀的閱讀星空』が出版されていたことを知り、台湾から取り寄せて読んでみました。映像だけではわからなかったそれぞれの本屋さんや店主のストーリーが載っていて、とても興味深い内容でした。これは絶対に面白い、いつか日本に紹介したい、でも紹介するなら本と映像、必ず一緒に…。

日本と同じく読書離れが進み、出版不況にある台湾ですが、そんな逆境にめげることなく、台湾では独立書店が新しい文化のひとつとして根付きつつあります。読書活動を推進する場として。地域コミュニティの情報プラットフォームとして。店主を含む、書店に集う人々が「小確幸*」を楽しむ空間として。そんな活力あふれる台湾の書店文化を、一緒にのぞいてみませんか?

※小確幸…作家・村上春樹さんによる造語で「小さいけれども、確かな幸福」を意味する。台湾で流行語となった。

小島あつ子
台湾への尽きせぬ興味と台湾映画好きが高じて、自主上映活動を行う「台湾映画同好会」を2015年に立ち上げる。これまでに6回、日本未配給/権利切れ映画の自主上映会を開催。
元図書館司書=「本好き」と思われがちだが、その実「本に囲まれた静謐な空間」が好き。
台湾映画同好会:https://www.facebook.com/taiwan.cinema.club/