マンガで学ぶペタンクの文化と魅力
書名: 漫画ペタンクの歴史 ブール競技に情熱をかけた人々
作画:マルセル・ユデルゾ
原作:クロード・アゼマ
訳 :三宅雅之
発行年:2023年7月
仕様:A4変形判/上製本/48ページ/4色
ジャンル:単行本・実用・スポーツ・コミック
ISBN:978-4-909125-42-2

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こうして、足を地面に着けてブールを投げる新しい競技が生まれた。

記念すべき最初の参加者は、商店主のバッシーノさんとデルマストロさん、魚屋のシボンさん、靴屋のサビーノさん、森番のウーブラルさん…みんなで10人だった。

作画:マルセル・ユデルゾ(Marcel Uderzo)
1933 年生まれ。1965 年、兄アルベールの漫画『タンギーとラベルデュール』と『アステリクス』から兄の元で助手 として働く。1981年から 1985年にかけて代表シリーズ『マティアスの回想』を発表。ジュール・ベルヌの小説を漫 画化した『海底 2 万里』『神秘の島』『月世界旅行』のほか、スポーツを描いた本書『漫画ペタンクの歴史』を始め、『フランススキー界のトッププレイヤー』『ジュードーのチャンピオン』などがある。 2021 年 1 月フランスのノルマンディーで亡くなる。

原作:クロード・アゼマ(Claude Azema)
1946 年フランス南西部のポー生まれ。現在、国際ペタンク・プロヴァンサル連盟 (FIPJP)会長。1974 年から 1985 年まで全仏ペタンク・プロヴァンサル連盟(FFPJP)のジュラ県委員会の会長、1993 年から FIPJPの書記長を務めた後、2004年 9月にFIPJPの会長に就任。また、 2021 年から現在まで 世界ペタンク・ボウル連盟(WPBF)の会長も歴任。長年に渡り各国のペタンク連盟と協力して競技の発展や組織づくりに取り組んでいる。

訳:三宅雅之(みやけ まさゆき)
1956 年岐阜市生まれ。1982 年慶應義塾大学大学院哲学専攻を修了。1985 年から 2021 年まで公認会計士として業務。 日本ペタンク・ブール連盟会員及び同審判員、国際ペタンク指導協会日本支部 (CIEP-japon ) 理事。 2021 年と 2022 年に国際ペタンク指導協会フランス本部(CIEP)において研修を受け、上級レベルの指導員資格を取得。フランスのペタンクの歴史文化の紹介に努めている。
ブログ:『ペタンクールの孤独なつぶやき』

世界でもっともやさしく奥が深いスポーツはこうして生まれた。

直径7センチ重さ700グラム程の鉄のボール(ブール)を投げて競うペタンク。本場フランスでは50万人を超える競技人口があり、ヨーロッパやアフリカ、タイやインドネシア等のアジアの国々でも盛んに行われている。

古くは紀元前から、多くの人を魅了してやまないブール競技の歴史と、ペタンクの発展に情熱を注いだ人々を紹介するはじめての本。ペタンク愛好家としても知られるフランスの国民的歌手アンリ・サルヴァドールが、シンプルでありながら奥深いペタンクの世界へとナビゲートする。


ペタンクの物語をマンガで描く
世界初の試み

 この本はペタンクの歴史をマンガで描くというフランスでも初めての試みで制作されました。ペタンクはフランスでは余りによく知られた庶民娯楽ですが、それゆえに紹介する書籍などが乏しく、その歴史を知らない人も多かったのです。その一方で、今日のペタンクは庶民の娯楽にとどまらず高度な競技スポーツとしても大きく発展し、世界選手権やYou Tubeでの動画配信も行われているほど盛んになっています。FFPJP(フランスペタンク連盟)はこの競技の歴史的理解と認識を広め、将来のオリンピック競技の候補とする意図でこの本の制作を行いました。

 ”玉を転がす”という古代から存在する素朴なゲームは中世から近代を経て歴史の中で変遷していきました。そして、1907年の南仏のシオタという町で今日のペタンクと言うゲームを決定づけた出来事が起きたのです。それは病気で足が不自由になった一人の伝説のプレイヤー”ジュール・ル・ノワール”が独自のルールでゲームを始めたことでした。そのゲームは従来以上にシンプルで奥が深く、男女や老若を問わず誰もが平等に楽しくプレーできる画期的なものとなり、瞬く間にフランスから世界に広がりました。ここ日本でも数十年前からシニアのスポーツとして紹介され全国で1万人を超える競技規模になっています。しかしフランス本国同様に専門的に紹介する書籍等も少なく、その歴史はあまり知られていません。

 この本で紹介される様々なエピソードは日本に初めて紹介されるものが多くあります。禁を犯し隠れてゲームに興ずる聖職者達。保養先のスイスでペタンクに出会い故国に持ち帰るタイの皇太后。ペタンク連盟を結成しようとする先人たちの苦労、そしてそのペタンク連盟内部の権力争い。極めつけはペタンクの人気を高めた数々の伝説のプレイヤーたちの活躍です。 こうした物語はペタンクを知る人のみならず、一つの文化史としても多くの人の興味を引くものと信じます。


ブールと呼ばれる金属製のボールの製造工程が描かれている貴重なシーン


ペタンク大会の様子。人々の熱気が伝わってくる


ペタンクを楽しむ有名人たちの姿も


世界的歌手にして名ペタンクプレイヤー
アンリ・サルヴァドールが物語の進行役

本のシナリオを書いたのはFIPJP(国際ペタンク連盟)会長のクロード・アゼマ。作画はフランス漫画(バンド・デシネ)の巨匠でとりわけフランスの国民的漫画『アステリックス』の作者として知られるアルベール・ユデルゾの弟マルセル・ユデルゾ。そして、物語の進行役は歌手でありまた有名なペタンクプレイヤーでもあったアンリ・サルヴァドールです。こうした最高の布陣で制作された本書はペタンクの歴史と文化を分かりやすくそして余すところなく伝える最高の1冊となりました。

進行役(マンガの登場人物):アンリ・サルヴァドール Henri Salvador(1917-2008)
アンリ・サルヴァドールは1917年フランス領ギアナで生まれ、12歳でフランス本国に移住しました。ギタリストとしてスタートし、歌手、コメディアンとして成功しますが、1960年代はテレビのパーソナリティとしても人気を博しました。2002年に発表したアルバム『眺めの良い部屋Chambre avec vue』はミリオンセラーとなり、彼の代表作となりました。2008年にフランスのパリで亡くなりました。
彼のもう一つの顔は優れたペタンクプレイヤーでもあったことです。彼はペタンクやその母体となったプロヴァンサルのゲームを愛し、幾つかの大会で優勝もしました。 人気歌手として、また周囲を笑いに包む陽気なペタンクプレイヤーとして彼は多くの人々の注目を集め、また愛されました。彼の存在でペタンクを知ったフランス人も多かったと言われています。 そんな彼は本書『PASSION…PÉTANQUE(ペタンクの歴史)』に冒頭から登場しペタンクの歴史を語る進行役を務めています。


作画:マルセル・ユデルゾ Marcel Uderzo(1933−2021)
マルセル・ユデルゾは1933年イタリア移民の子としてフランスに生まれました。学校卒業後は父から楽器職人の手ほどきを受けますが、1964年頃から父と離れ漫画(バンド・デシネ)の独学を始めます。1965年、ひと足先に活躍していた兄アルベールの漫画『タンギーとラベルデュール』と『アステリクス』の制作を手伝いつつ、兄から漫画の手ほどきを受けました。
1967年から1979年まで兄のもとで助手として本格的に働いた後、1981年から1985年にかけて彼の代表シリーズ『マティアスの回想』を発表。18世紀にカナダに移住した若いノルマンディー人をユーモラスに描き評判となりました。
1987年には、フランソワ・ミジェとジャン・ルイ・ウゲットを脚本家に迎え、写実的なスタイルで、ダルゴー社から出版された『マリーの冒険』シリーズの中の『La Mort rouge(赤い死)』を発表しました。これは奴隷商人の捕虜となり、その後奴隷を解放しようとする若い女医マリーの活躍する冒険物語でした。
彼の作風はフランス漫画(バンド・デシネ)の伝統を受け継ぐ素朴で温かみのある描画、それに奇をてらわないオーソドックスな画面展開にあり、フランスでは庶民を中心に人気があります。 この他単独作品としては、1995年にジュール・ベルヌの小説を漫画化した『海底2万里』『神秘の島』『月世界旅行』を発表。
1996年からはスポーツ分野にも進出し、本書『PASSION…PÉTANQUE(ペタンクの歴史)』、2000年には『フランススキー界のトッププレイヤー』『ジュードーのチャンピオン』、2015年『ローラン・ギャロス』『ライト兄弟』『チャールズ・リンドバーグ』等を発表し話題になりました。
残念なことに、一昨年の2021年1月、フランスのノルマンディーで亡くなりました(87歳)


原作:クロード・アゼマ Claude Azema (1946ー  )
クロード・アゼマは1946年フランス南西部のポーで生まれました。現在FIPJP(世界ペタンク連盟)の会長を務めています。
過去には1974年から1985年までFFPJP(フランスペタンク連盟)のジュラ県委員会の会長を努め、1993年から2004年にFIPJP(世界ペタンク連盟)の書記長、2004年9月に会長に就任しました。 また、2021年から現在までWPBF(世界ペタンクスポーツブール連盟)の会長も歴任しています。
彼は長年に渡り各国のペタンク連盟と協力して競技の発展や組織づくりに取り組んできました。また何度も来日し、セミナー等では自ら講師を務め、日本のペタンク界ではよく知られています。ペタンク関連の執筆も多く、ペタンクの世界的普及のために企画された本書では脚本を担当しました。

スポーツが苦手な私の人生を変えたペタンク

発起人:三宅雅之より


 ペタンクという競技はまだまだ日本ではよく知られていません。知っている人でもシニア向けの地味な球技ぐらいにしか思っていないでしょう。

 しかしペタンクは、本国フランスでは50万人を超える競技人口があり、ヨーロッパやアフリカ、タイやインドネシア等のアジアの国々でも盛んに行われています。その一方、テレビ放映されることもなく学校のクラブ活動にもないこのスポーツはまだ日本では本格的なデビューの前の段階にあります。私はスポーツと無縁な人生を送ってきましたが60歳を超えた頃にペタンクと出会い従来のスポーツ観を改めることになりました。

 ペタンクは直径7センチ重さ700グラム程の鉄のボール(ブールと呼ばれます)を投げて目標に近づけることを競うゲームです。転がして近づけることが基本ですが、ティールといって、近づいている相手チームの球を打ち出すこともします。

 ペタンクは、他のスポーツに比べ、年齢や性別そして身体能力に関わらず誰でもプレーすることが出来ます。そのゲームは身体のみならず投球技術や戦術、チームの連携等々多様な要素で組み立てられ、身体能力の差や年齢性別の差、はたまた経験年数の差を超越してゲームが戦われます。大人が子供に負けたり、経験者が初心者に負けたりする場面もよく見られます。  その一方で、ブールを転がしてある決まった地点で停止させる技術や、遠くにある相手チームのブールに当てる技術などは上達するのに相当な練習が求められます。あらゆる人が初心者から上級者まで対等に戦えて楽しめる、その一方で高度な技術も追求できるという実に奥の深いゲームと言えましょう。

 私の願いはこのスポーツが日本に浸透し、生活の様々な場面であらゆる人々が楽しくプレーするようになること。そして多くの大会が開催されて競技レベルが向上し、いずれ日本のペタンクが世界的な大会でも活躍できる様になることです。それと同時に、もう一つの願いは、スポーツが苦手だった私自身の経験から、このスポーツが学校教育の場に取り入れられ、スポーツ嫌いの少年少女たちに楽しくスポーツを楽しめる機会を提供したいということです。

 この本はペタンクの歴史と文化を解説した初めての本であり、バンド・デシネと呼ばれるフランス風のおしゃれな漫画でペタンクの歴史がわかりやすく魅力的に描かれています。多くの人がこの本を手に取りペタンクに興味を持たれることを願って止みません。