人々のこころに灯りをともす
エリザベスとライリーの物語
あるところに、
歩けない、話せない女の子がいました。
女の子は自分で動くこともできませんでした。
でも、ほほえむことができました。
女の子の名前は、エリザベスといいました。
ある日のこと、エリザベスのもとに
もふもふ犬のライリーがやってきました……。
これは、
エリザベスとライリーのおはなしです。
知るためのはじめの一歩
エリザベスとライリーの物語を手に取りやすい絵本に
発起人:渡邊 智美 (「トーチの会」代表)より
『
エリザベスと奇跡の犬ライリー』を刊行した当時は、トキソプラズマもサイトメガロウイルスも知名度はかなり低く、それどころか一般の人には「母子感染症」というもの自体、あまり意識されたものではありませんでした。あれから4年近く経ちましたが、トキソプラズマもサイトメガロウイルスも名前だけなら、ある程度の周知は進んだように思えます。
それもこれも研究班の先生方が地道に研究成果を挙げてくださっている事実があるからです。しかしせっかく素晴らしい成果があっても、以前ならその情報は専門家しか知らないままでした。
私たち患者会トーチの会は、これをもったいないことだと考え、専門家たちが持っている情報を、一般の方にもわかりやすいように、親しみやすく噛み砕いた方法で、届けてきました。
トーチの会が作成したホームページや母子感染予防啓発パンフレット、前回出版した本は皆、そのためのツールです。ある程度の効果を発揮し、私たちが訴える母子感染予防啓発の必要性に理解を示してくれる人や団体が出てきました。
まだ国主導ではありませんが、各自治体や各産院の判断で、妊婦向けに私たちの母子感染予防啓発パンフレットを配布したり、両親学級で触れたりしてくれることが増えました。妊婦向けの情報誌や一般のニュースとしてもとりあげられる様子も前より見られます。
ですが、まだ足りません。私たちが目指すのは、誰もが常識として母子感染予防の知識を持つことです。タバコやアルコールが胎児に悪影響を及ぼすことは日本人なら誰もが知る常識です。誰も妊婦にタバコや酒を勧めたりはしません。
それと同レベルに持っていくためには、妊娠する前から、結婚も妊娠も意識しないような、もっと若い時から知る必要があると思います。理想は学校で健康教育のひとつとして取り入れることですが、今は他にもたくさん教育課題がある中で、カリキュラムを動かすのは難しいことです。
だったらせめて、興味の種だけでも蒔けたら良いなと考えました。知るためのはじめの一歩を、気軽に手に取れる形で作りたいと思ったのです。それには何百ページもある本では敷居が高いので、前回の本より手軽で、さらにもっとわかりやすく、どんな人でも興味を持てるような表現が必要です。
そこで絵本はどうか、となりました。
おしゃれなアートブックとして眺めるために…、動物好きな方がかわいいなとつい手に取ってみたり…、時間潰しに小さいお子さんに読むために…、どんな形でも歓迎します。なんとなく手に取って、なんとなく読んでみて、この登場人物たちはどうしてこんなふうになったのかなと少しで良いので「考える」人を増やしたいのです。その小さな体験が、他の情報に出合った時に繋がって、しっかり心と頭に刻み込まれるようになれば良いなと思います。