本屋をめぐれば
イギリスの最もよいところが見えてくる。
本屋から本屋へとイギリスじゅうをたどるスロートラベルはいかが?
本書でご紹介する18のルートでは、のどかな田舎道も通りながら、風光明媚な町や村、うっとりさせるような絶景、黄金に輝くビーチ、息を呑む海岸線に、
産業、文学、歴史の伝統が豊かに息づく土地などなどを訪れる。
本屋めぐりの旅の素晴らしいところは、一つとして他と同じ本屋がないこと。本、書棚、窓、レジといった要素は同じでも、雪の結晶のようにそれぞれ独自の個性がある。その書店の伝統、場所柄、店の建物の歴史、オーナーや店員の特別な情熱――これらが個性を生み出している。
書店情報、近隣散策に役立つサイトも満載。
書店の詳しい位置がわかるオンラインマップ:
https://www.fairlightbooks.co.uk/BookshopToursofBritain/
雰囲気たっぷりの写真で巡る
個性あふれるブックショップツアー
「イギリスの書店はいつも美しい土地の中心に建っている!」と常々感じ、本屋を愛してやまない作者ルイーズ・ボランドが、独立系書店を軸にイギリスじゅうを旅する本屋めぐりのツアーガイド/紀行文です。
各ツアーではイングランド南西部のジュラシックコーストから始まり、ウェールズの山々を越え、イングランドの産業中心地を通り、スコットランドの高地、ウィットビー、野鳥の楽園ノーフォーク・ブローズ、ロンドン中心部、サウスダウンズ、そして最後にトマス・ハーディが「ウェセックス」と称して物語の舞台にたびたび使ったドーセット一帯を訪れます。途中、海岸やお城、炭鉱やウイスキー蒸留所などを経て、バードウォッチングやハイキング、カヌーができる場所、大邸宅やイギリスで最も愛されている作家たちの家を訪れつつ、もちろん素敵な本屋さんを巡っていきます。
各章には魅力的な本屋とその周辺の美しい風景写真が豊富に掲載されていて、ユニークな経営や品ぞろえ、イベントや独自のサービスなどで個性が光るイギリスの独立系書店がイギリスの魅力と共に紹介されています。
本書ではイギリスをまず18の地域に分け、各地域の特色に沿ったブックショップツアーを紹介する18章から構成されています。各章は地域の売りとなるユニークな点を紹介する章タイトルがつけられ(オックスフォード&コッツウォルズなら「歴史ある書店、アンティーク・ハント、パブ」、北ウェールズなら「山々、砂、星空観察」など)、同じ見開きにあるページいっぱいの大きな写真で読者をツアーに誘ってくれるのです。
「イングランド産業中心地ツアー1 繊維工場、鉱山、ブロンテ姉妹の故郷」
各章末に観光施設などのリストとツアー登場順の書店リスト(左ページ)
看板犬だけでなく看板鶏も登場する(右ページ)
今だから読みたい!
世の中にはまだまだ見るべきものがある
発起人:ユウコ・ペリーより
これまで何度となく…本屋を訪れることで私は元気づけられ、世の中には素敵なものがあると思い出すことができた。
――ヴィンセント・ファン・ゴッホ
上のゴッホの言葉は、本書『The Bookshop Tours of Britain』のイントロダクション冒頭で引用されているものです。
この本が発売されたのは2020年10月で、世界各国で外出制限を設けたりワクチン開発が急がれていました。私がクリスマスイブにこの本を家族にプレゼントしてもらって読み始めた時はイギリスがふたたびロックダウンに入る頃で、この本屋さんに行きたい、ここも行きたいと思っても実店舗は全て閉まっていたのでした。
「そうそう旅行も行けないのにガイドエッセイ本なんて」と思われる方もいるかもしれません。けれど、ずっと散歩程度のごく限られた外出のみで過ごしてきた私を「ここではないどこか」へ次々連れて行ってくれたのはこの本でした。
ゴッホが本屋に元気をもらって世界に素敵なものがあるのを思い出したように、この本はユニークで宝石のようにキラキラした美しい本屋、外からみれば小さいのに中に入れば好奇心がはちきれそうなほどいっぱい詰まった、ドクターフーのターディスみたいな本屋を紹介して、読む人の心を満たしてくれます。今、けして気軽に旅行をすることができない中でも、世の中にまだまだ素敵で見るべきものがある、と知ることは何て幸せなことでしょう。それを伝える本の一つである本書を、ぜひ日本語で送り出してさらに多くの人にこの気持ちを味わってもらいたいと考えています。
発起人・翻訳:ユウコ・ペリー
北海道大学文学部卒、京都大学大学院修士課程修了、英国カーディフ大学修士課程修了。2006年からイギリス在住。2012年からフリーランスの翻訳者として仕事を始め、実務翻訳の他、イギリス現地取材の同行、資料翻訳なども行っている。訳書『[図説]お菓子の文化誌百科』(原書房)。C・S・ルイスがナルニア物語の『ライオンと魔女』に登場するランプポストのアイデアを得たヴィクトリア時代のガス灯がある街に暮らし、物語に登場するごはんを実際に作って楽しむのが趣味。
写真は本書に掲載されている書店「Malvern Book Cooperative」の前にて