
ある夜、ゼロカルカーレのもとにメールが届く。相手は最近連絡していなかった女友だちのカミーユだ。ローマに来るから家に泊めてほしいとでも言われるかと思いきや、差出人は彼女の父親で、カミーユが亡くなったことを知らされる。
唐突な訃報をきっかけに、のん気に構えていた自分に嫌悪感を覚えながら、彼女に淡い恋心を抱いていた少年時代を振り返っていく。基本的に数ページで終わるショートストーリーの連作で、無気力な友人セッコや自分の脳内の「相方」アルマジロほか、個性的な登場人物たちとともに過去を内省していくシニカルなコミック・エッセイだ。





発起人・翻訳:二宮大輔(にのみや・だいすけ)
初めまして、二宮大輔です。簡単に自己紹介をしますと、兵庫県の大学を留年した後、就職がいやでイタリアに逃亡。翻訳家を志してローマ大学に入り直したのはいいけれど、こちらでも留年を繰り返し、日伊計10年間、学部生だけをして学業を修了。日本帰国後、ありがたいことに数冊訳書を出せまして、現在は京都でイタリア人観光ガイドをしながら日々文芸翻訳にまい進する44歳です。
ぼくより2歳年下のゼロカルカーレが暮らしているのはレビッビアという地下鉄の終点。刑務所のある地区です。留学時代、ぼくはたまにレビッビアからバスに乗り、さらに郊外にある野球場に行って友だちと遊んでいました。レビッビアから郊外に伸びていく大通りを進むにつれてどんどんうらぶれていく雰囲気がたまらなく好きだったのですが、どこがいいのかうまく人に伝わりません。
ごく簡単に言うと、ローマ郊外の何もない日常や、そこに暮らす人々の思考や言動が魅力的だったということなのですが、そんな魅力を現地からの視点で的確に表現しているのがゼロカルカーレです。同世代で、少なからず同時代のローマを体験したぼくにとって、ゼロカルカーレは放っておけない存在になりました。
しかも、こんなマニアックな作品テーマなのに、国内での人気は例えるならジャンプの人気漫画並。それはイタリアの漫画カルチャーが日本とは異なる形で広まっているからであり、それを知る意味でも、本作が貴重な一冊になることは間違いありません。人気は少年ジャンプ、作風はローカルなローマ。そんなゼロカルカーレの翻訳出版のご支援どうぞよろしくお願いいたします。
発起人:野村雅夫(のむら・まさお)
どうも、ラジオDJの野村雅夫です。このクラウドファンディングの発起人である京都ドーナッツクラブの代表を務めています。ドーナッツクラブといっても、ドーナッツの製造販売をしているわけではなく、イタリアの文化的お宝を日本に紹介することを目的に結成した10人ほどのグループで、映画や書籍、音楽について好奇心の赴くままに地道な活動を続けて、今年で20周年。10年前に法人化して今にいたります。
活動の原点は、イタリアのノーベル賞作家ダリオ・フォーのコメディーを翻訳上演したことでして、なにかコードネームのようなものをメンバーそれぞれ名乗ろうと、当時よく集まっていたのがドーナッツ屋だったことから、僕であればポンデ雅夫のように、みんな何かしらのドーナッツ名が付いています。
今回、ゼロカルカーレの翻訳を担当する二宮大輔くんの場合は、ハムエッグ大輔といった具合に。ハムエッグは出会った頃からサブカルチャーに詳しく、いつかイタリアの漫画カルチャーを日本に紹介するプロジェクトをやりたいねと話していました。
ところが、その代表格であるゼロカルカーレについては、僕と有北クルーラーというメンバーのふたりが先んじて仕事をしました。それが実写映画化された『アルマジロの予言』の字幕翻訳です。主人公がローマで織りなすうだつの上がらない日々とチープな着ぐるみのアルマジロのすっとぼけたファンタジーの融合には目を見張りましたし、次々に繰り出される社会風刺コントのようなセリフの応酬にゲラゲラと笑いながらコンビで字幕を付けていきました。これは、イタリア文化会館と朝日新聞が共同で毎年春に開催している伝統あるイタリア映画祭からの仕事だったのですが、肝心の原作は日本で出ていなかったのです。
今回のクラウドファンディングで日の目を見ることを願っていますし、本が出ることになったら、久しぶりにあのカルト映画(といって良いと思う)上映の機会も探りたいなと思いながら、まずはハムエッグとアルマジロの言語的格闘を見守る立場として、クラウドファンディングの成功を願っています。翻訳者集団である京都ドーナッツクラブとしては、イタリアの刺激的な書籍を日本でももっと手に取れるようにしたいと意気込んでやまないわけで(企画のストックはわんさとあります)、サウザンブックスでそのプラットフォームが作れるか、試金石だと考えています。どうぞ、ご協力のほど、よろしくお願いします。
