“地獄の墓掘人”と呼ばれた伝説のプロレスラー
ローラン・ボックの闘いに満ちた人生
書名:ローラン・ボック 欧州最強プロレスラー、人生の軌跡
著者:アンドレアス・マトレ
訳:沢田 智
発行年:2025年9月
ジャンル:単行本・ノンフィクション・スポーツ
仕様:B5判/464ページ/1色/上製本
ISBN:978-4-909125-64-4

「今日が、残りのファイトマネー33万マルクを支払ってもらう期限の日だ。約束が守られなければ、猪木はリングに上がらせない」

いつも温厚だった新間が、笑顔を浮かべずに交渉する姿を私は初めて目にした。

私にはキャッシュがなかった。


主人公:ローラン・ボック(Roland Bock)
1944年ドイツ生まれ。14歳の時に地元のレスリングクラブでアマレスを始める。ヨーロッパ選手権で実績を残し、1968年のメキシコ五輪に出場。1972年のミュンヘン五輪の最有力候補となるもド イツアマレス協会と対立して除名される。1973年にプロレス転向。レスラー兼プロモーターとして活躍し、モハメド・アリと引き分けた男「アントニオ猪木」と闘うために1978年にヨーロッパでのビッグイベントを主催。プロレス史に残る激闘を展開するも、興行的には大損失を負い、さらにその清算において脱税・詐欺行為が発覚して逮捕・収監された。出所後には、実業家として再起し、大規模なディスコ経営を手掛けて、王のような暮らしを手に入れる。1990年代は、事業を社員に任せ、東南アジア・タイへ移住。楽園の暮らしを楽しんだ。2000年代はドイツに戻ったが、その時点では、経営不振となったディスコは人手に渡っていた。しかし、その後も新たな事業に突き進む野心は衰えず、新たに起業してドイツで暮らしている。

著:アンドレアス・マトレ(Andreas Matlé)
1960年ドイツ・フランクフルト生まれ。ディスコ経営、企業の広報、文化イベントの企画担当に従事、フリーライターとしても活躍中。フランクフルト近郊のヴェッテラウ在住。著書に、アスリート、 実業家としてのローラン・ボックの生涯を描いた『BOCK!』(2021年)、プロレスラー、ルネ・ラサルテスを描いた『Lasartesse』(1991年)、体操選手キム・ブイのアスリート人生を描いた『45 Sekunden - KIM BUI』(2023年)、作家のための入門書『Kleine Fibel』(2022年)、その他『Sonay A. ここに生きる』(2016年)など、実業家やアスリートへの丹念な取材をベースにしたバイオグラフィー、評伝を多数執筆している。

アントニオ猪木が最も苦戦したレスラー
雄牛との闘い、自分自身との闘い

私には、あの死闘の記憶が今でも鮮やかに蘇る。
戦友・アントニオ猪木との戦い、私の人生に刻まれた忘れ難い瞬間。
ドイツから日本の読者に熱い思いを届けたい。

ローラン・ボック


貧困の少年時代を経てアマレス欧州王者、オリンピック出場を果たす。プロに転じ、アントニオ猪木との死闘で名を刻む。だが、その結末は逮捕・収監。そこから実業家として奇跡の再起。“ディスコ王”と称されるも波乱は続く。東南アジアへ移住するも、事業失敗と感染症により帰国。そして新たな挑戦へ−−−壮絶な生涯を描いた一冊。
ボックは、まだ人生を諦めていない。

著者は、自身も熱烈なプロレスファンで、体操選手キム・ブイのアスリート人生を描いた『45 Sekunden - KIM BUI』がシュピーゲル誌ベスト・セラーに選ばれたジャーナリスト、アンドレアス・マトレ。


「幻の最強レスラー」ボックの足跡を日本のプロレス史に残したい

発起人・翻訳:沢田 智(さわだ・さとる)より

 アントニオ猪木を極限まで追いこんで勝利した「ローラン・ボック」を私は1980年代に入ってから知りました。真の世界チャンピオンを決める新日本プロレスのIWGP構想に向け、プロレス中継で古舘アナがボックの話題に触れ、雑誌でも「まだ見ぬ強豪」として取り上げられるようになった頃です。

 そして初来日。木村健吾戦、長州力戦の衝撃。一切妥協を許さないローラン・ボックの闘い。猪木との完全決着が待ち望まれながら、突然の引退。その後、ボックに関する情報は更新されることなく、最強幻想だけが生き続けました。ローラン・ボックについて、同じような感覚で決着のついていない「昭和プロレスファン」は多いのではないでしょうか?

 2021年にドイツでローラン・ボック自伝が刊行されると、日本でも翻訳出版が期待されました。しかしその動きは無く時間ばかり経過する中、原書を購入してでも読みたいと思うに至りました。そもそも私はプロレスファンなので、1978年の欧州選手権ツアーの項目だけを読むつもりでしたが、最強の男に成長した経緯、なぜ突如引退し、その後はどう生きたのか、次から次へと興味が湧き、一気に読み進めました。

 この本の感動を多くの人と共有したいと思い、ブログ等で紹介してきました。そして翻訳出版の可能性を探りましたが、ニッチな分野の本の出版については出版社は消極的です。そこで「クラウドファンディング」での出版を企画するに至りました。

 「ローラン・ボックとは何か」を探している昭和プロレスファンの力で、「幻の最強レスラー」を再発見し、ボックの足跡を日本のプロレス史に残していきましょう。

kawano発起人・翻訳:沢田 智(さわだ・さとる)
1962年島根県生まれ。学校を卒業後、放送局のエンジニアとして働く。オリンピックやサッカーワールドカップなどのテレビ中継で、ドイツをはじめ、南北アメリカやアジアなど、世界各地で業務を経験。放送業界専門誌への寄稿多数。
プロレスファンとして独自のホームページを立ち上げて情報を発信。ブログ・ライター名は『FavoriteCafe』管理人。2020年よりWebプロレス専門誌『週刊ファイト』に連載コラム「ファイトドキュメンタリー劇場」を執筆中。
HPアドレス:https://kissatalk.web.fc2.com/index.html
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