フィリピンの社会問題に正義と誠意を問いかけて議論を巻き起こした“フィリピーノ・ノワール”の最高峰。『Smaller and Smaller Circles』
書名:Smaller and Smaller Circles
著者:F. H. Batacan
出版社:Soho Crime
発行国:アメリカ
発行年:2015年
言語:英語
仕様:ハードカバー/368ページ
ジャンル:フィクション/ミステリー
ISBN:978-1616953980
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著者:F.H.バタカン
マニラ生まれ。フィリピン大学大学院卒業後、政府の情報機関であるフィリピン・インテリジェンス・コミュニティーで10年近く勤務し、諜報活動や詐欺調査などの専門訓練を受ける。2000年、シンガポールへ移住し、放送記者を経て、ニュース番組のプロデューサーとして放送ジャーナリズムの世界に身を置く。2002年、本書と同タイトルの短編小説を出版して作家デビュー。パランカ記念文学賞、フィリピン国民文学賞、マドリガルーゴンザレス賞を受賞。

異色の経歴の著者が挑む、フィリピン発の本格ミステリー

1997年夏、フィリピン・マニラ。野積みされたゴミ山がいくつもそびえるケソン市パヤタス地区のゴミ処分場で、顔の皮を剥がれ、内臓を抜き取られた少年の死体が次々と発見される。

付近では最下層の貧しい人々が暮らし、子供たちにゴミを拾い集めさせることで糊口を凌いでいた……。フィリピン国家警察から捜査への協力を要請された法人類学者サエンス神父は、残忍な連続殺人鬼を見つけ出すため、かつての教え子で友人でもある心理学者ルセロ神父とともに全力を尽くす。

犯人が心に抱える深い闇とはいったい何なのか? 

フィリピン国内でロングセラーとなり異例の販売部数を誇る本作は、中村文則の作品をはじめとした世界の優れたクライムミステリーを出版するNYの出版社、Soho Crimeの目に留まり、2015年に原作から大幅に加筆されたものがアメリカにて出版される。

さまざまな階層の人物たちの事情や思惑が入り乱れるなか、カトリックと科学を専門とし、正義を貫き事件を解決へ導こうとする主人公2人の人物描写と、シンプルで無駄のない文体が読者を作品世界へと惹き込む傑作。


■メディア掲載のレビューより

“鮮やかで衝撃的。夢中で読んでしまう。 神父探偵による警察ドラマが、フィリピンへの魅惑の窓を開く。”
—バリー・ランセット、作家

“内容的に物議を醸すかもしれないが、ハイレベルな犯罪小説”
—CNN フィリピン

“目まぐるしく展開する犯罪小説が、カトリック教会の役割とその支配を暴き出す……暗く、ザラザラして、アメリカンノワールのように魅きつけられる、見逃すわけにはいかない一冊”
—ストランド・マガジン

“フィリピンのケソン市を舞台にした、古典的で良質なシリアル・キラー小説。”
—ガーディアン

“単なるエンターテインメント小説に終わらず、フィリピンの貧困や不正に読者の目を向けさせてくれる”
—ニューヨーク・ジャーナル・オブ・ブックス

“まるで神父版シャーロック・ホームズ。国籍の違う魅力的なホームズを求める推理小説ファンにはぴったりの一冊”
—ブックリスト

“バタカンの見事なデビュー作にして、フィリピンを舞台にした初のサスペンス小説。あらゆる次元で入り組んでいて、示唆に富んでいる。続編が待ち遠しい!”
—ブックページ


■主な登場人物

・ガス・サエンス:神父、法人類学者。
・ジェローム・ルセロ:神父、心理学者。ガスの捜査の相棒。
・フランシスコ・ラスティモーザ:フィリピン国家捜査局(NBI)の長官。
・ジェイク・バルデス:NBIの副長官。
・フィリップ・マーパ:NBIの副長官。
・ベンジャミン・アーキナス:NBIの捜査官。弁護士の資格を持っている。
・ジョアンナ・ボニファチョ:テレビ局の事件記者。ガスの元教え子。
・アレックス・カルロス:歯科医。
・エミール:神父。パヤタスの教会に仕えている。
・イサガニ・ラミレス:神父。子供への性的虐待疑惑がある。
・ラファエル・メネセス:枢機卿。ラミレスの件を把握しつつ隠蔽している。


世界中の犯罪小説を出版する独立系出版社と、ユニークな作品を提案する作家エージェンシーが発掘した問題作

発起人 トランネット 近谷浩二より

2015年秋のことでした。芥川賞作家の中村文則さんとシンガポール作家祭に参加するため、羽田空港の出発ロビーで何気なくメールをチェックしていたところ、中村さんの小説の英訳版を出版しているアメリカのSoho Pressから一通のメールが届きました。そのメールには、「中村文則さんによろしく。シンガポール作家祭での成功を祈っています。ところでSoho Pressは今年、フィリピンの犯罪小説を出版しました。興味があればサンプルを送ります。日本でこの小説を翻訳出版できる可能性はあるかしら?」とありました。

私はもともとミステリーや犯罪小説のファンというわけではありませんでしたが、フィリピンの作品というのがめずらしく、しかも、このフィリピン人の著者の代理人を務めている、当時ナイロビ、シンガポール、そしてマニラに拠点を置いていたJacaranda Literary Agencyという作家エージェンシーの推す作品はユニークなものが多いのはよく知っていました。

そんな経緯もあり、本書を手に取ってみたところ、エンターテイメントとして面白いだけでなく、フィリピンの社会問題が鋭くえぐり出されていました。日本でも子供の貧困が問題になっていますが、フィリピンの貧困問題といったら日本の比ではありません。ゴミ拾いをしてその日その日を生き抜く子供たち。腐敗に慣れきってしまっている警察組織。著者は、フィリピンのそのような状況が、本作を書いた90年代も今もまったく変わっていないと怒りをあらわにしています。

日々のニュース等で報じられるフィリピンとは異なるレベルで同国の実情を容赦なくつきつけてくる本書の翻訳出版を実現し、多くの方に読んでいただきたいと切に願っています。

発起人:近谷 浩二(ちかたに こうじ)
1991年立命館大学法学部卒業。UCLA Extensionで映画製作の勉強をした後、全米映画俳優組合員に。帰国後、(株)トランネットに入社し翻訳出版プロデューサーとして世界の書籍を取り寄せて日本語版をプロデュースするとともに、国内の本を海外、特に欧米諸国で翻訳出版することに注力。現在は芥川賞作家や直木賞作家の海外でのブランディングにも従事。

トランネット
出版翻訳専門の翻訳会社。2000年設立。年間150~200タイトルの書籍を翻訳する。多くの国内出版社の協力のもと、翻訳者に広く出版翻訳のチャンスを提供するために出版翻訳オーディションを開催。出版社・編集者には、海外出版社・エージェントとのネットワークを活かした翻訳出版企画、および実力ある翻訳者を紹介する。
http://www.trannet.co.jp/

近年は日本の書籍を海外、特に欧米諸国に向けて発信するJapanese Writers' Houseプロジェクトも運営している。
http://jwh.trannet.co.jp/